間接照明 効果とテクニック

2024年7月12日
間接照明 効果とテクニック

柔らかな光で空間に立体感を生み、洗練された空間に導いてくれる間接照明。自宅やご自身の部屋に取り入れたいとお考えの方もいらっしゃると思います。
今回は間接照明について、その効果と魅力を最大限に引き出すためのテクニックをご紹介いたします。

間接照明とは?

間接照明とは、壁や天井・床に光を照射し、反射した光で空間を照らす照明のことを言います。
美しく広がる光のグラデーションが魅力です。ダウンライトやスポットライトなどの照らしたい対象物を光源から直接照らす直接照明とは違い、光源が直接目に入らず、眩しさを抑えることができ、柔らかい光で空間に奥行きや広がりを持たせてくれます。
使用する照明器具に決まりはなく様々な照明器具や設置方法で作っていくことができるのが、間接照明です。

・手法1:建築化照明

建築化照明とは、照明器具を天井や壁などに組み込み、建築物と一体化させた間接照明の手法のひとつで、建物を建てる際やリフォームする際などに、予め施工されたものを言います。
建築化照明には、天井に光を反射させる「コーブ照明」、壁に光を反射させる「コーニス照明」、壁に接した天井面と下部の壁を照らすコーブ照明とコーニス照明の両方を取り入れ使用した「バランス照明」の3種類があります。

建築化照明は、建築物に組み込み、取り付けをするので、空間に溶け込み美しく照らすことができます。
その一方で、完成するまで仕上がりを確認できず、イメージと違った場合にも大きな手直しが難しいことがほとんどです。
明るさが足りなかった、床や壁・窓ガラスなどに光源が映り込んでしまった、メンテナンスに手間がかかる、等の後悔を減らすために、照明の専門家を交えて計画を進めることをおすすめいたします。

・手法2:既製の照明器具で間接照明を作る

建築化照明を取り入れ、本格的に間接照明を作らなくても、間接照明は作ることができます。
スポットライトやブラケットライト、フロアライトなどで壁や天井を照らしてみる、ソファーやベッドの足元、TVを設置した背面の壁を照らしてみる、観葉植物の鉢の背後から天井に向けて照らしてみる、それだけで間接照明の完成です。

同じ照明器具でも直接、物に光をあてた場合と、その周りの天井や壁・床に光をあて反射の光で周囲を照らした場合で、空間が全く異なる表情を見せます。
既にお持ちの照明器具でも気分次第で間接照明を取り入れることができるのが、この手法の良さです。

間接照明がもたらす効果

間接照明がもたらす効果には、「視覚的効果」と「心理的効果」があります。具体的にどのような効果があるのかをご紹介していきます。

・視覚的効果1:目を惹く美しさで空間を演出できる

間接照明は、基本的には照明器具を見せないように納めることで、光だけを空間に広げます。
また、反射した光を空間に広げることで、照らしたい対象を直接照らす直接照明と比べ、陰影は柔らかくなり、建材の質感や色味・素材感を際立たせることもできます。

・視覚的効果2:開放的で広々とした雰囲気を演出できる

天井を照らせば天井が高く感じ、壁を照らせば奥行きを感じます。
人には暗いところより明るいところを見ようとする性質があり、天井や壁・床といった面を照らす間接照明の光に視線が向くことで空間に広がりを感じさせることもできます。
そして、見せたい場所や物を明るく照らし、視線を誘導することで、見せたくない場所、物を視線から外すこともできます。

・視覚的効果3:眩しさを抑えて柔らかいニュアンスの明るさを演出できる

光源が直接、人の目に入ってしまうと、それが眩しさの原因となってしまうこともあります。
光源を隠し、光を天井や壁・床に反射させて空間に広げることで、眩しさを抑えつつ明るい、光に包まれるような柔らかく魅力的な空間を演出することができます。

・心理的効果1:リラックス効果が期待できる

眩しさを抑えることのできる間接照明は、目に入る刺激を減らすことができます。
さらに、反射光を利用した柔らかく光が広がる空間は、落ち着いた印象を与えることができ、気持ちを落ち着かせてくれるのでリラックス効果を期待できます。

間接照明に使用される光の色(色温度)は、電球色が多く採用されます。
色温度は、数値が高くなるにつれて日中の青みがかった光に近づき、低くなるにつれて夕暮れ時のようなオレンジ色の光に近づきます。
人間の身体は、太陽の1日のサイクルが私たちに与える影響等と同じように、日中に近い明るく、色温度の高い光を浴びることで活動的になり、夕暮れ時のように明るさと色温度を抑えた光を浴びる事で休息モードになっていくので、間接照明の色温度を電球色にすることで、光の色からもリラックス効果を得られ、反対に昼白色など色温度の高い光の色を採用すると、集中力を高めることができます。 間接照明の光の色(色温度)に迷われた際には、取り入れたい部屋の雰囲気や「間接照明は電球色!」といったイメージだけで選ぶのではなく、部屋の用途や得たい効果から選ぶのもおすすめです。

・心理的効果2:睡眠へと導いてくれる効果を期待できる

人間は、夜にTVやパソコン、スマートフォンなどの明るい光を直接浴びると睡眠周期をコントロールする働きのあるメラトニンが分泌されにくくなり、体が昼間だと勘違いし、寝つきが悪くなります。
色温度の低い間接照明の眩しさのない柔らかい光は、副交感神経に働きかけ、睡眠へと導いてくれる効果を期待できます。
睡眠をしっかりとりたい時や、緊張がとれず寝付けなさそうな時などは、就寝前の1~2時間前から色温度の高い白い光の照明は消し、色温度の低い間接照明の光だけでゆっくり過ごされてみてはいかがでしょうか。

間接照明の魅力を最大限に引き出すためのテクニック

・間接照明だけの光で計画しない

間接照明は、直接照明に比べて、照度の確保が難しく設置条件や照らされる場所の素材などが大きく影響することもあり、明るさの予測が難しいことがデメリットとして挙げられます。
部屋でくつろいで過ごすための明るさとしては適していますが、文字を書いたり、本を読んだりには明るさが不足します。
建築化照明の取り付けを検討されている方は、予め明るめの照明器具を取り付けておき、その時々、シーンによって明るさを調整できるよう「調光機能」を使う、明るさを必要とする場所が決まっているのであれば、直接照明と組み合わせて計画するなどの必要があります。

・演出したい雰囲気に合わせて、視界に入る光の位置を決める

間接照明は、天井から床までどこにでも設置することができますが、設置する高さによって演出できる雰囲気に違いがでます。
一般的には、高い位置に設置すると空間の広がりや奥行きを感じやすく、低い位置に設置すると落ち着いた印象を与えます。
また、間接照明をいくつか違う高さに設置することで、いくつかのポイントに視覚が誘導され、リズム感や奥深さが空間に生まれます。
取り入れやすい間接照明だからこそ、自由に空間の中に配置していくことで生活スタイルに合った快適な空間を作り出すことができます。

・照らされる場所、周囲の素材やツヤの有無を確認する

間接照明を設置する際には、照らされる天井や壁・床、照明器具を設置する周囲の素材や質感にも注意が必要です。
ツヤ、光沢のある素材が間接照明の光によって照らされる場合には、隠したはずの光源が反射して映り込んでしまう場合があります。
窓ガラスにも映り込みが発生しやすいので注意が必要です。
明るさを確保したい場合には、淡い色味のものを照らすことで明るく感じやすく、照らしたい面を周囲と同じ素材にすることで空間に統一感を持たせることができます。
一方で、マットな素材や濃い色味を照らす場合には、想像しているよりも光が伸びず、明るく感じられないケースもあります。

明るさ・素材を検討しつつ、出来上がりを想像し、取り付け後のメンテナンス性も考慮しながら遮光板や造作の設置をするなど、どの角度から見ても光源が見えないようにすることで、空間に広がる光だけを純粋に楽しむことができます。

・照らされる場所に物を置かない

家具やエアコン、他に取り付けた照明器具・設備機器など、光源に近いところに設置されたものがあると、それらに光が反射し、思わぬ方向に光が広がったり、影ができたりすることがあります。
意図的ではない限り近くには物を置かないよう計画する必要があります。
また、平坦な仕上がりになるシートやクロス貼り、パネルの貼り付けなどが照らされると継ぎ目に影ができ、目立ちます。継ぎ目を目立たせたくない場合には、継ぎ目に対して垂直になるように光をあてることで、光の影響を受けづらくなります。
これから間接照明の設置を計画される方は、参考にしてみてください。

 

今回は、間接照明について、その効果とテクニックをご紹介しました。
間接照明の効果を利用しながら、空間を更に魅力的に演出したり、生活や健康に寄り添った環境づくりに役立てていただけると嬉しいです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、(次回タイトル:入力してください。)です。
私たちと照明を楽しみながら、照明を味方につけて、ライフスタイルやその空間で過ごす人たちに寄り添った居心地の良い空間づくりの参考にしてみてください。

About me

髙山 明香
La it -Lighting Design Office- 代表
建築設計事務所、メーカー、照明代理店と勤務した後、2020年La it -Lighting Design Office-を設立。
照明デザイナーとして、照明計画を中心に空間デザインを手掛ける。